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泳ぎ続ける、ということ。 〜 第一話 〜

その時、私は末広町にいた。
Webデザイナーである原田氏と待ち合わせ。

来た。丸い黒ブチフレームの眼鏡をかけている。
青山あたりにいる、お洒落女子がよくかけてそうな眼鏡
初見である。

「それ、どうしました?」
「今日のために新調しました」

本気だ。男気とでも言おうか。
勢いづいた私たちは、秋葉原の駅方面に向かう。

さて、打合せのための店探し。
できれば静かな場所がいい。
裏通りをウロウロする。

しかし、この辺りは呼び込みが多いな。
道を塞ぐ感じで、ビラを渡してくる。
他の街だと迷惑千万であるが、
この街だとそんなに迷惑さを感じない。
むしろ、相手にされて、ちょっと嬉しい。

とはいえ、早めに落ち着きたいものだ。
一件の店前に着いた。

“海底の世界をイメージした店内”
“たくさんの海の仲間たち”

そんなことが看板に書いてある。
海底か。うん、実に静かそうだ。
打合せも捗るにちがいない。

「ここにしましょうか?」

私が声をかけた時、原田氏はすでにエレベーターに乗り込んでいた。
さすが、眼鏡を新調しただけのことはある。
千里眼を持った状態だ。

私たちは海底に向かった。
つづく

 
 

本日のアトオシとは
「ロゴマークを軸とした展開。」が特長のグラフィックデザイナー永井弘人による、「日常とデザインを拡げる雑文集。」日本タイポグラフィ協会正会員。年鑑ベストワーク賞受賞。著書「デザイナーになる。」(MdN)執筆・出版。
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