弁当に包む。
母校である専門学校の文化祭があったので、印刷会社さんへの挨拶前に立ち寄る。
プレゼンテーション大会が行われていた。
「colors」という共通テーマにて、作品をつくり、クラスから代表1名が抜擢される。
抜擢された者が、学科(グラフィック科とかインテリア科とか)を超えたプレゼン大会を行う。というもの。
アート科学生の作品。
「お母さんの「心」を、お母さんがつくってくれるお弁当に置き換え、カラフルに表現しました。」
やわらかなフェルトでつくられた、おにぎりやおかずは実に可愛らしい。印象は悪くない。
しかし。何かが足りない。
「この作品に対し、何かご意見のある先生はいらっしゃいますか?」
進行役スタッフが言う。
審査員でもあるプロダクト科の先生(ご年配の方です)がスッと手を挙げる。
「僕が中学生のぐらいの時、周りも含め、裕福な家庭って全くなくてね。
育ち盛りなんだけど、ご飯を目一杯食べることなんてできなかったんだ。
今でも印象に残っている弁当がある。仲のよかったやつの弁当だ。
フタをあけると、こうピンポン玉より少し小さい芋。芋がね、七個だよ。
それ以外は何も入っていない。でもね。弁当箱の中にちゃんと入っているんだ。
そこに、なんだろ、お母さんの『心』ってのが表現されていると思うんだ。
芋七個の弁当に。そういう表現も『心』だよね。」
…まさかこの場でこんないい話しを聞けるとは思ってもいなかった。
一人、静かな感動を覚えていた。
私の印象に残る弁当といえば、
セブンイレブンバイト時代、良く食べていた、廃棄の「炭火焼牛カルビ弁当」。
その中には、肉の旨味を引き立たせる「タレ(心)」が包まれている。
コンビニ弁当なんだけど、全く飽きないんだ。あれ。悔しいけど。
2013年10月4日 23:49 | カテゴリー:日常とデザインの間口を拡げる雑文, デザイン寄りの話の抜粋, 更新企画
- 「ロゴマークを軸とした展開。」が特長のグラフィックデザイナー永井弘人による、「日常とデザインを拡げる雑文集。」日本タイポグラフィ協会正会員。年鑑ベストワーク賞受賞。著書「デザイナーになる。」(MdN)執筆・出版。
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